バッハは嫌いだった!
清水靖晃&サクソフォネット『Cello Suite』
もはやジャンルというものに括ることはほとんど不可能な清水靖晃。
私は、バッハが嫌いでありました。
暗くて、重苦しくて。
ミュンヒンガーとかが演奏する、いかにもなバッハがたまらなくイヤでしたね。
偉い人として、祭り上げたてまつられているのも、なんとも。
しかし、これは。と思った記述をフト見つけたのです。
彼はクラシック愛好家で、とりわけバッハを愛好していたようですが(友人である小林秀雄のようにはのめり込まなかったみたいです)、バッハは軽やかな音楽なのだ。と、私が彼の音楽に感じていたこととは真逆の事を書いているんですね。
緩余楽章は、ヤッパリしんねりムッツリでありますが、清水の軽やかなテナーがバッハのあの重苦しさを、取り除いていて、まるで踊るように楽しい(実際、当時のダンス音楽の形式で書いている楽章が多いので)わけです。
で、いろいろ、最近の古楽のバッハも聴いてみると随分とフォルムがスッキリとしていて、19世紀のロマン派のバッハ理解がいかに歪みきっていたのかがよくわかりますね。
とはいえ、じゃあ、古楽派がやっている事が、ホントにバッハの意図を伝えるものなのかどうかは、誰にもわからんわけですが。
清水のテナーによる演奏も、木管楽器の特性をうまく生かした、なんともふっくらとした演奏で、それは録音の仕方にも独特のこだわりを持っております。
一部は、栃木県や岩手県の洞窟で録音されたもので、その独特の残響がおもしろいです。
とにかく、バッハは暗く演奏したら、つまんないですね。
バッハに対する食わず嫌いが改善した演奏でありました。