食わず嫌いはいけない。
Nick Drake『Five Leaves Left』。
ネクラな音楽は基本的に嫌いである。
若くして不遇のうちに亡くなってしまった。というニック・ドレイクは、聴いてみたいと思わなかった。
夭折のシンガー・ソングライターって暗そうじゃないすか(笑)。
何をキッカケに聴いたのか覚えてないけども(ブラッド・メルダウがレパートリーにしてたからだったかな?)、たしかにこの人の音楽は明るくはないです。
しかし、彼の音楽がもつ独特の仄暗さは、とても魅かれてしまいます。
メンバーが結構すごいよね。ギター、ベイスにリチャード・トンプスン、ダニー・トンプスンが参加(この2人は兄弟じゃないです)。
プロデューサーは、ジョウ・ボイド。
要するに、彼、レコード会社から結構期待されてたんですよ。
しかし、本作がそんなに売れた。という事は聞いた事がないのですが、このデビューを持ってケンブリッジ大学を辞めてるので、そこそこ評価はあったんでしょうね。
今聴くと、「そこそこ」どころの騒ぎではなく、それこそ、ヴァン・モリスン『アストラル・ウィーク』なんかと並べても決して引けをとることのない大傑作なのですが、こういう地味だけども滋味溢れる作品というのは、なかなかバカ売れという事にはなりませんね。
ヴァンのような強烈なヴォーカルではなく、繊細で朴訥とした歌い方は、彼のロンドンの曇天を思わせる曲想とピッタリで、ロバート・カーヴィの素晴らしいアレンジも見事にハマっている。
元々、うつ病気質な人で、アルバムが売れなかった事が、病状を悪化させてしまったのだそうですが、彼がこの後も生き続けて、音楽を発表してくれていれていたら、どんなに素晴らしい曲を書いたことでしょうね。
死後、ジワジワと再評価されていって、今では英国フォークロックの最高のミュージシャンの1人として非常に高い評価を受けるに至っております。
食わず嫌いはいけないと思わせてくれる1枚。