mclean-chanceの「鯔背でカフェオーレ」

ジャズ以外の音楽について語るブログです。生暖かく見守ってください。

唐突にブルックナーへ。

Bruckner Symphony no6
Saarbrücken Radio Symphony Orchestra,
Stanislaw Skrowaczewski, conductor

ブルックナーが習作、未完を入れると、11の交響曲を作曲しましたが、第8番、第9番、第5番という傑作と比べると、第6番は比較的マイナー扱いされているかもしれません。

大作の5番、7番の間にあって、演奏時間が60分に満たない小さい作品であり(ブルックナー交響曲は大体70分くらいが普通です)、曲想が地味なのも損なのですが、前半の2楽章、とりわけ、アダージョが素晴らしく、ヘタすると、ブルックナーアダージョブルックナー交響曲は、第2、第3楽章がアダージョスケルツォです)の中でも一番好きかも知れません。

ブルックナーを始めて聴いたのは、多分、NHK FMだったと思いますが、たしか、カラヤンの指揮で「ロマンティック」を聴いたのだと思いますけども、何だかわからなかったですね。

それこそ、後期ロマン派特有の、異常に大編成で、巨大な曲想を持っていて、とにかくスケールが尋常でない。それはわかるわけです。

しかし、何が言いたいのかサッパリわからなかった。


「ロマンティック」は第二楽章ですが、何だか茫洋としていて、どういう音楽だかわからないんですね。

カラヤン以外の演奏も誰だかもう忘れましたが、ラジオで聴いたのですが、全く同じ感想で、とにかくウドの大木を見ているようで、わからない。

いいとか悪いとかいう以前の問題でこういう音楽体験は多分、初めてだったと思います。

しかし、マタチッチという指揮者がブルックナーの名手である事を知り、彼がチェコ・フィルを指揮した第7番の演奏は素晴らしいという事を知り、早速、CDを聴いてみて見ましたが、コレで一発でわかりましたね。

ブルックナー交響曲は、適性、不適性がかなりハッキリ出てしまう音楽であって、芸風が合わない人には全く演奏できない音楽なんですよね。

クナッパーツブッシュ、シューリヒト、マタチッチ、ヨッフム朝比奈隆、ヴァントと、かつてはブルックナーを演奏したら、天下一品という指揮者が結構いたのですが、最近はすっかり見られなくなったのは、残念ですね。。

何というか、宇宙の胎動とでもいうのでしょうか、ブルックナーが描いているのは、人間ドラマではないんですよね。

そういうものを突き抜けた、巨大な世界です。

大自然の厳しい営みから、大宇宙につながっていくような、そういう桁外れな営為を描いているのだと思いました。

そういう意味で、彼は後期ロマン派ですらない。

私がラジオで聴いたのは、そういうものが全く表現されていなかったので、何もわからなかったということなのでしょう。

ブルックナーは、誰の演奏を聴いてもよい。という事にはなりませんので、ご注意を。

さて、2016年で93歳となり、未だに現役であるスクロヴァチェフスキが1990年代に録音された全集盤からの一枚ですが、「ブルックナー指揮者」の最後の巨匠の指揮ぶりは、結構、キビキビとメリハリがついていて、普通、ブルックナーを演奏するにはアンマリこういう事はしないのですが、彼の演奏は、ブルックナーの本質を掴んでおり、逸脱を感じません。

第二楽章のアダージョは、第8番のような巨大な曲想ではないのですが、静かに心に沁みてくるというのか、スクロヴァチェフスキの指揮ぶりも、愛おしむような指揮ぶりで好感が持てます。

少しも力みが感じられず、常に8割ほどの力で演奏しているのに、十分な響きがあるのがすごいですね。

後半の第3、第4楽章の出来が今ひとつなのが、本作の欠点ですが、スクロヴァチェフスキの指揮によって、かなり改善されております。

とりわけ、第4楽章の出来がよい。

かなり劇的な演奏ですが、このくらいやった方が、この楽章は面白いでしょう。

ブルックナー交響曲は摑みどころさえわかれば、ドンドン好きになっていくと思いますので、6番、7番あたりから聴いてみるといいかもしれません。

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