現在の黒人音楽のほとんどがコレとつながるのではないのか?というくらいに決定的な作品。
D'Angelo『VOODOO』
前作から5年もの間を空けて発表された2枚目。
本作の後、アルコール依存などの問題もあり、2014年までアルバムが発表される事がなかったが、本作の余りの完成度の高さに、次回作がなかなか発表できなくなってしまったというのが、ここまで発表が遅れてしまった原因ではないかと思っている。
本作で際立つのは、やはり、宅録感がかなり減じていて(それでも多くは自分で演奏してますが)、ゲストが増え、録音もニューヨークのスタジオを使っており、相当音が豪華ですね。
もう、アル・グリーンがどうのとか、そんなレベルではなく、完全にオリジナルな作品です。
しかし、特にすごいと感じるのは、リズムへの探求が更に進んでいる事ですね。
当時のアメリカのブラックミュージックを考えても、コレは、恐らくは最も先鋭的だったのではないか。
コレだけ巧みにリズムの訛りを取り込んだ北米大陸のポピュラーミュージックというのは、当時ほとんどがなかったのではないでしょうか。
ラッパーやジャズトランペッターがゲストに入っているというのは、二次的な問題であって、このリズムを生み出すまでの苦労がなかなか2作目である、本作を発表できなかったのではないかと推測します。
ココで、ディアンジェローの作風は一応の完成を見たといってよく、以後はそのヴァリエが展開していくのが普通のミュージシャンのあり方だと思うのですが、そういう妥協ができなかったのでしょう、彼は更にもっと先を進もうとしたら、コレがなかなか超えられない壁にぶつかってしまったのではないでしょうか?
それが、10年を優に超えてしまうう、アルバム発表が止まる原因になってしまったのだと思う(この打開は、音楽性の基本は変えずにバンド形式になる事と、ライヴを積極的に行う事で、煮詰まることを回避する道を見出したのだと思います)。
いずれにせよ、今もって、ブラックが到達した1つの極北である事は間違いないでしょうね。
最新作『Black Messiah』も必聴です。