mclean-chanceの「鯔背でカフェオーレ」

ジャズ以外の音楽について語るブログです。生暖かく見守ってください。

モハメド・アリ追悼

James Brown『Star Time』

 

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1991年に発売された、4枚組のボックスで未だに現役の商品。

1956年から84年までの録音を年代順に網羅した作品で、コレを聴けばJBについての大枠はわかるというとても優れたボックスで、コレを超える作品は今後も出てこないでしょう。

コレに入っていないシングル曲を探したり、ライヴ盤を買えば、JBは十分だと思います。

20世紀はさまざまな音楽の天才が出現しましたけども、その中でもJBはトップクラスにいる事は間違いないでしょうし、その彼を知るには、最低限としてこの4枚は聴かなくてはならないでしょう。

10代の頃はクラシック一筋でブラックミュージックにほとんど親しんでこなかった私には、彼のやってる事は、正直、サッパリわかりませんでした(笑)。

弟が持っていたベスト盤を聴いてみたんですが、なんで同じことをただ繰り返していて、全然展開がないんだコレ(笑)、となんだかわからなかったんです。

まだ、P-Funkのが、ロック的に展開するのでわかりやすかったのですが、JBは何をやってるのがわからなかった。

オイオイ、ギターとか弾いてくれよ、スカスカじゃねえかよと(笑)。

その極端にミニマルな音楽の良し悪しがサッパリわからなくて、なんでこんな音楽が素晴らしいとか言ってんだろ?とかホントに思ってました(笑)。

20代になってから、急にロックを聴くようになって、初めはジミヘンみたいにものすごくノイズがぶっ込まれていて、すさまじいところにシビれてしまいまして、マウンテンとかクリームみたいなハードロックなんかを好んで聴いてましたけども(はづかし〜)、だんだんリズムというもののすごさに気づいてきて。

タメが効いてるドラム、バンドをグイグイ引っ張っていくベイスというのがとても気持ちよくなってきて、マキシマムなものばかりを好んでいた私の価値観がガラッと変わってしまいましたね。

ハードロックはほとんど売り払ってしまって、改めてJBを聴いたら、コレがとんでもなくいいんですね。

ほぼワンコードをバンドが一丸となって、反復し続けることによって生まれる興奮。

ホーンやギターですらほとんどソロなし!

時々、JBが「カモン、メイシオゥ!カモン!」とかなんとか言って、アルトサックスのメイシオ・パーカーたちに突然ソロを取らせるのですが、基本は全員が一丸となってリズムになっているですね。

 

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昨年上映された彼の伝記映画で、サックスを指差して、「お前ら、これがなんだかわかるか?ドラムだ!、全部ドラムなんだよ!」とバンドのメンバーにいうシーンはとても印象的で、こんな発想はジェイムズ・ブラウン以前にはなかったのではないでしょうか。

 

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グルーヴというものが初めて理解できたんでしょうね。

このボックスはデータがとても詳しくて、どこで録音されているのも全部書いてあるのですが、JBは拠点とするスタジオで録音するという発想が皆無で、いいアイディアが思いついたら、すぐにスタジオに行ってあっという間に1曲仕上げてしまう人である事がよくわかり、それはますますラディカルになっていき、アレンジも何も決めずにいきなり本番で一発で録音していると思われるとんでもないものも70年代には見られます。

そんな鉄壁なバンドを従えて、ほとんど神がかっているとしか言いようのない扇動的なJBのヴォーカルが絡むこの気持ちのよさ。

シャウトのタイミング、声質ともども、これ以上ないというものでしょうね。

山下達郎が「私がナンバーワンだと思うヴォーカリストは昔からJB」というの納得です。

実際、「ウッ」「ハッ」とか掛け声だけかけている人ではなく、ものすごいる歌唱力がありますからね。

 

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ヴォーカルすらリズムというラディカルさですね。

コレがライヴだと、もうJB的としか言いようのない圧倒的でタイトなダンスパフォーマンスがつくので、観客はもう興奮のルツボ(笑)!!

Youtubeなどをご覧になるとわかりますが、暴動寸前になっているものすらあります。

これだけ動き回れるのは、全盛期のモハメド・アリくらいなものでしょう。

彼の音楽は良くも悪くもワンマンなので、すべてが「オレ様の世界」という相当なマッチョですが(ライヴでミスをすると一回あたり10ドルの罰金があり、JBはミスをすべて覚えていて、必ずメンバーに払わせていたほどです)、ここまで尽きぬ来ていると、もう、痛快としか言いようがありません。

ファンクというジャンルを事実上作ってしまった人であり、黒人音楽初心者の方は、Disc 2、Disk3、と聴き進めることでJBがどのようにファンクを推し進めて行ったのかがよくわかり、Disc4でそれが次第に衰退に向かった矢先にヒップホップへと橋渡しをするという鮮烈なラストを知ることになります。

Disc 1は、まだ、R&Bの枠内でJBが歌っていることの演奏が大半でそれが次第にあのJBのスタイルに変貌していく過程を追ったもので、コレはある程度、JBのスタイルが好きになってから聴いても遅くはないと思います(とはいえ、この頃からJBは卓越してますが)。

60〜70年代の黒人音楽が劇的に変貌していく中で、その中心にいた人物を知る事は、黒人音楽に興味のある方であれば、誰しも避けては通れない道でありましょうし、彼なくしてはヒップホップはなかったですね。

モハメド・アリ、マルカムXと並ぶ時代のアイコンです。

 

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