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mclean-chanceの「鯔背でカフェオーレ」

ジャズ以外の音楽について語るブログです。生暖かく見守ってください。

トータルの音作りのすごさに驚いた。

Peter GabrielPeter Gabriel(melt)』

 

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ジャケットがこれまた秀逸! 

 

 

ピーター・ゲイブリエルのソロ作は4作目まで自分の名前が書いているだけで何のタイトルもついてないのでとても困ります(笑)。

日本盤は「2」、「3」、「4」と便宜上つけるんですが、それもカッコ悪いので、海外での一般的な表記に従いました。

ホンの短い間、プログレが好きだったのですが、好きだったのは、Yes、King Crimson、そして、Genesisくらいだったので、んなもんプログレ好きからすれば大したことねえよ!と言われればそれまでなんですけども、要するにのめり込めなかったです。

私はプログレ好きになる前にクラシックが好きだったので、ショスタコーヴィッチやバルトークのがプログレより強烈だったんですね。

それでも今挙げた3つのバンドは未だに好きでして、それはやっぱりロックならではの魅力を持っていたからなのです。

さて、前置きが長くなりましたが、そのGenesisを脱退してソロになってしまったゲイブリエルですが(ヴォーカルが脱退しても解散しないGenesisというバンドはある意味すごいですけども)、私のイメージはどうしても芳しくなかったんです。

多分、あのバカみたいに売れてしまった『So』が彼の作風なのだと思い込んでしまったんですね。

しかも悪いことに、私、武道館でのライヴの時、バイトで会場にいまして(笑)、すんごい貧弱なセットでゲイブリエルが歌っていたのを目撃してるんですよ。

あの頃のゲイブリエルは、めちゃくちゃ凝りまくったステージでパフォーマンスしてた筈なのですがいろんな大人の事情で、かなりショボいステージにせざるを得なくなかったのでしょう、当時、ロックにさほど興味もなく、彼の事を知らなかった私は、「もう全盛期を過ぎつまんない外タレ」だと思い込んでいました。

思い込みというのは恐いもので、ソロ作をなかなか聴いてみようと思わなかったんです。

Genesisのシアトリカルに展開するウェットが程よくある暗い世界観がとても好きで、そこを役者のように歌うゲイブリエルがこれまた素晴らしく好きで、ロックを聴き始めた私には、英国のヴォーカルで彼とデイヴィット・ボウイが1番のアイドルでした。

で、そこから幾星霜、たまたま持っていたピーター・バラカンさんの『ぼくの愛するロックの名盤240』という本(とてもいい本だと思うのですが、なぜか絶版ですね)を持っていて、コレにこのアルバムが取り上げられていたんです。

そうか。ゲイブリエルは嫌いではないので、いっぺん聴いてみようかな?という程度の気持ちで聴いてみたんですが、もうアルバムの出だしでたまげましたね。

なんだ、このドラムの音はと(笑)。

1〜4作目のまるでディストピアのような出口のない絶望感に打ちのめされましたね。

Nine Inch Nailsの暗さはシンドイのですが、ゲイブリエルのもつ独特の暗さはとても惹かれますね。

ギターの弦を擦る音を加工して作ったと思われるエフェクトのカッコよさ。

そこに絡むこれまた加工された声のヴォーカル。

とにかく、音作り1つ1つの丁寧さ、繊細さが尋常でないんですね。

そして、全体に漂うヒンヤリとした感触です。

ロバート・フリップのギターが爆発する「No Self Control」「I Don't Remember」。

こうやってサイドメンとして無心にギターを弾いている時のフリップの素晴らしさと言ったらありませんね。

この最初の4曲だけでこのアルバムは名盤と言っていいでしょう。

この完成度に匹敵するのは、デイヴィット・ボウイ『Heroes』でしょう(どちらもロバート・フリップが参加してますけども)。

スタジオでの音作りという点で、本作が与えた影響は計り知れないと思います。

そして、スティーヴ・ビコの名前を世界中に広めた大名曲「Biko」で締めるというこの格調の高さ。

コレもボウイと同じことが言えますが、ゲイブリエルもまた、ここで行き着くところまで行き着いてしまった感があったのだと思います。

あまりにも「アート」として完成されたものを作ってしまったんですね。

よって、ポップスターに転換していくほかなかったのでしょう。

その成功作が『So』だったのですね。

これの聴いていると、Genesisというバンドではもはやゲイブリエルの表現は溢れてしまっていた事がわかります。

ゲイブリエルはこのアルバムでヴォーカルだけでなく、ピアノ、シンセサイザー、シンセベイスなどを演奏し、バッキング・ヴォーカルも1人で多重録音してます(一部、ケイト・ブッシュが参加してますが)。

もう、バンドという枠は彼には必要なかったのでしょう。

 

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最近のピーター・ゲイブリエル

パッと見、誰だかわからなかった。。 

 

※2016年12月18日は、スティーヴ・ビコの生誕70周年にあたります。