アメリカを強くしていたのは、混血である事を痛感する名盤。
Joe Bataan『Salsoul』
最近のジョー・バターン。
フィリピン人とアフリカ系アメリカ人の混血という、ニューヨークのような人種のごった煮を象徴するようなジョー・バターンの1970年代の代表作の1つ。
不勉強で、ニューヨークのラテン・コミュニティの音楽についてはそれほど詳しくないのですが、ジャズを聴いていると、その隣に中南米音楽が間違いなく鳴っていた事は、だんだんとわかってくるものです。
ジョー・バターンは、ジャズもサルサも煮えたぎっていた頃のニューヨークで、ソウルフルなサルサ、すなわち、「サルソウル」を打ち立てた伝説的な人物で、80年代以降は活動があんまり伝わらなくなっていたのですけども、2000年代になって突如アルバムを発表し、コレが全くブランクを感じさせない出来であった事から、日本でもバターンの再評価が高まっていった。という流れなのだと思いますが、本作は、その彼の全盛期を捉えたアルバムです。
現在だと、「レアグルーヴ」という分類になるような、いかにもアナログで聴いたら最高な音作り、ラテンとファンク、ソウルが絶妙なバランスで融合した、その独特のミクスチュア感覚がとても今日的で、まさにバターンの出自通りの見事な「混血音楽」だと思います。
どの曲も素晴らしいのですが、どちかというと、LPのB面以降が私の好みですね。
インストナンバーの「ラティン・ストラット」の気持ちよさ、マーヴィン・ゲイやジョン・レノンもびっくりなド直球の名曲「Peace, Friendship, Solidarity」(平和、友情、連帯)は、バターンの代表作と言っていいんじゃないでしょうか。
こんな赤面してしまうような理想主義が、まだこの時代には本気で信じられていたんですね。
昨今のアメリカの様子を見ていると、このジョー・バターンのまっすぐで、かつ、しなやかな主張は、見直されなくてはならないのかもしれませんね。
追伸
2017年12月に来日したのを見たんですが、ホントに元気で声も全く衰えてないので、驚きました。
素晴らしいライブでした。
ついつい会場でLPを購入してしまいましたが、やはり、アナログで聴くに限る音楽でしたね。