今聴いても新鮮!
細野晴臣『泰安洋行』
いわゆる「トロピカル3部作」の2作目ですが、コレは、ニューオリンズ、沖縄が強い作品です。
70年代のウェストコーストのロックに後追いどころか、ほぼ同時進行しているのが、驚異的ですね。
聴いたことがない人に、「アメリカで、こういう変わったロックのアルバムが1970年代にあったんだよ」と言って聞かせても、バレないでしょう。
それくらいのクオリティですね。
ここでのニューオリンズや沖縄のリズムの解析をコンピュータを使ってより精緻に行ったのがYMOですから、細野にとっては、ここで行っている事とYMOには、それほど飛躍はないのだと思います。
言い方は、おかしいですけども、「人力YMO」と言いますか、今聴くとそういう風に聞こえなくもない(YMOの初期のライヴは、渡辺香津美などのサポートミュージシャンが入っていたので、思いのほか人力バンド、というか、フュージョンなのですが)。
それにしても、このアルバムには参加しているミュージシャンの腕前には、細野を含めて心底驚きますね。
ただ、これを当時の音楽ファンのリテラシーを考えると、誰もが絶賛したとは思えないですね。
Dr.ジョンやリオン・ラスル、ライ・クーダーが当時のロックファンに多く聴かれていたとは思えませんし、かなり先進的な一部のファンのみを熱狂させたのではないでしょうか。
彼の独特の楽園志向は、やがて、横尾忠則とのインド旅行(かなり体調を崩してひどい目にあったようてすね)、あるいは、中沢新一との共著『観光』(残念ながら、現在は絶版です)にも結実していくのですが、とにかく、今聴いても驚きの連続であり、しかも、現在まで彼の活動が如何に一貫性があるのかという事にも驚いてしまいます。
恐るべき傑作であります。
現在はちくま文庫版も絶版です。