アルバムごとに作風がドンドン変わっていくバンドでした。
Traffic『Mr. Fantasy』
サイケなジャケットが時代を感じさせていいですねえ。
これは忘れられないアルバムでして、「黒さ」とか「ファンキー」というものの面白さが初めてわかった作品でしたね。
とにかく、スティーヴ・ウィンウッドという人の才能にしびれました。
「No Face, No Name and No Number」、「Dear Mr. Fantasy」は傑作だと思います。
彼の黒人と聴き間違えてしまうほどにソウルフルなヴォーカル、そして、ファンキーなオルガン演奏(彼の演奏によってオルガンが好きになりました)と、類まれな作曲能力。
この余りの才気に、最も割りを食ってしまったのがデイヴ・メイスンでしょうが、この2人はまさに両雄並び立たずでありまして、メイスンが脱退してしまうのは、やむを得なかったのでしょう。
メイスンがイニシアチブを取ると、途端に正統英国ロック調になってきて、ウィンウッドと音楽性が明らかに違うんですよね。
その後のトラフィックは、完全にウィンウッドの音楽を表現するためのバンドに変貌し、彼の音楽を求めるがままにメンバーが自在に変わっていき、アルバムも一枚ごとにどんどん変わっていくという、驚異的なバンドになっていくわけなんですけども、私はこのアルバムの垢抜けない感じと黒人音楽ドップリ(ほんの少しサイケ)なところが大好きで、結局、コレが一番よいと思ってます。
ウィンウッドはホントに天才なので、トラフィックのアルバムはほとんどすべて聴くに値しますが、私の愛聴盤はなんといってもコレになりますね。
コレがなかったら、黒人音楽にハマる事はなかったかもしれません。
ラストのインスト曲「Giving to You」におけるウィンウッドのスキャットとオルガン演奏も必聴です。
日本では、トラフィック/ウィンウッドって、どうも人気が今ひとつですけども(作風がコロコロ変わるトラフィックがとらえどころがなかったからかもしれません)、それこそ、60年代の英国ロック好きな人で、コレが嫌いになる人はちょっと考えにくいです。
ウィンウッドとメイスンの持ち味の違いがなぜかマイナスどころかプラスになった不思議な名盤です。