mclean-chanceの「鯔背でカフェオーレ」

ジャズ以外の音楽について語るブログです。生暖かく見守ってください。

鍛え上げられた鉄の如きベートーヴェン!

ベートーヴェン交響曲第7番』

アルトゥーロ・トスカニーニ/ニューヨーク・フィル

 

 

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リハーサルは怒号の連続だったそうです。

 

トスカニーニといえば、かつては神のごとく崇拝された指揮者でしたが、私はNBC響の録音のあのデッドな響きがとてもキライで、しかも、CDで聴くと戦前の彼の録音は、相当マスタリングがまずく、正直、閉口せざるを得ない録音も少なくなかったです。


要するに、到底、その凄さを体験するのが、とても困難でした。


それでも、1941年のカーネギーホールでの、ホロヴィッツとのチャまイコフスキーのピアノ協奏曲第1番での、ぶつかり合いのような凄絶な演奏や、レスピーギの「ローマ三部作」は、録音の良さもあり、彼の鋼のように鍛え上げられた、鉄壁のオーケストラの凄さを知る事が出来たんです。


しかし、「オーパス蔵」という、状態のよいSP盤から、丁寧にCDを作るというレーベルが、戦前のクラシックの名演を、驚くほど鮮明な音で復刻したお陰で、トスカニーニの、とりわけ、ニューヨーク・フィル時代の猛烈な演奏がとてもクリアな音で聴けるに至り、トスカニーニを凄さが更にわかるようになりました。

 

本作は、ニューヨーク・フィルの常任指揮者を辞任し、引退を考えていたトスカニーニが、その記念に残したと言われる録音でして、フルトヴェングラーと人気を二分していたという(トスカニーニは、フルトヴェングラーアメリカ公演ができないように妨害工作をしていたそうです)、その実力が遺憾なく記録された素晴らしい演奏です。

 

一般にトスカニーニの指揮はとても直線で情緒に流されず、曖昧なら所が皆無な演奏であると言われますが、それは概ね間違ってはいないのですけども、第1楽章の非常にゆっくりとしたテンポがいつも間にかかなり速くなっていたりと、インテンポに演奏しているわけではなくて、劇的にテンポが変わる事に気付かないように周到にオケをコントロールしているのがわかります。


結果として、それがとても一直線に聞こえる様にしているわけですね。


フルトヴェングラーの演奏だと、もっとそこが劇的に演出されて、圧倒的にドラマチックです。

 

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生涯、ベートーヴェンを得意とした、フルトヴェングラーナチス協力という、謂れなき嫌疑もかけられました。


また、いざとなった時のオケの爆発の爆発の凄さは、尋常ではなく、録音技術の問題で音がかなり割れ気味ですけども、その凄まじさは、聴いていて心底驚きます。


どうやったらこんな風にオケが鳴るのでしょうかね(笑)。


ライナーやセルといった、ものすごくオケを隅々までコントロールする指揮者とも明らかに違う、独特の指揮者ですね。


個人的にはフルトヴェングラーの演奏を好みますが、ここまで圧倒的なモノを見せつけられると、認めざるを得ないですね。

 

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