もっと多様な観点で評価したいですね。
Thin Lizzy『Black Rose』
在りし日のThin Lizzy。
スィン・リズィがHeavy Rock/Heavy Metalのコーナーにいつも置かれているのが、どうしても昔から納得できない。
だいたい、メタルにあるようなハイテクのギターソロがあんまりないバンドだし、本作でも、ライノットの12弦アクースティク・ギターが美しい「Sarah」のような曲が普通に入っていて、しかも、そもそも、ライノットの歌唱法はおよそメタルとはかなり遠いし、影響与えているとは思えないんですよね。
ツインリードギターは、明らかにホーンセクションとしての役割を果たしている事がとても多く、フィドルから発展していったであろう、ギュンギュンとしたギターソロが求められていないというのは(本作はギャリー・ムーアが加入しているので、短いけども、彼のソロが炸裂している曲もありますが)、多分、メタルをやっている意識は当人たちにはほとんどなかったんじゃなかろうか。
売れてない頃のヒューイ・ルイスをライヴのゲストに招いてブルースハープを吹かせるとか、およそメタルとは思えないですよね。
本作も入魂のタイトル曲を除いては短くてキャッチーなものが多く、感じるのは、ライノットのアメリカ50年代のロックンロールやR&B、ポップスへのストレートな愛であり、それと彼のルーツの1つである(ライノットのルーツはとても複雑です)、アイルランド音楽との融合を目指していたのが、このバンドの本質なのでしょうね。
Gary Moore(左)とPhil Lynott(右)。
そういう意味では、ポーグスとかと近い気もしますし、U2の先駆的存在といったほうが的確な気がします。
前作の『Live and Dangerous 』起用したトニー・ヴィスコンティが初めてスタジオ録音でもプロデュースを担当しておりますが、本作を彼らの最高傑作に高めたのは、明らかに彼によるところが大きいのではないでしょうか。
写真見るとメタル感満点なのは、否めませんが(笑)、むしろ、クイーンとか『Young Americans』の頃のデイヴィッド・ボウイとかと比較しながら聴くととても興味深い作品ではないのかと思います。