mclean-chanceの「鯔背でカフェオーレ」

ジャズ以外の音楽について語るブログです。生暖かく見守ってください。

ロックバンドとしてのSteely Danの最高傑作!

Steely Dan『Countdown to Ecstasy』


結論から言おう。傑作である。


しかも、「ロックバンドとしてのスティーリー・ダンの傑作」なのである。

 

 

ウォルター・ベカーが2017年に亡くなった事で、今後は「ソロユニットとしてのダン」が継続しているようだが、1981年に一度解散しているスティーリー・ダンは、初めは、れっきとしたロックバンドであった事はもはや忘れられているのかもしれない。


そう。


スティーリー・ダンの最初は、ロックバンドがフェイゲン/ベカーのSSWユニットに変貌していく歴史であり、その完成形が、かの『aja』なのですね。

 

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説明不要の(左から)ウォルター・ベカー、ドナルド・フェイゲン。この2人でのアルバムは2003年の『Everything Must Go』までとなりました。

 


今更『aja』が如何に素晴らしいアルバムであるのかは散々語り尽くされているであろうから、もはや繰り返さない(聴いてない人がもしいたのでしたら、是非とも聴いていただきたい)。


本作は2枚目のアルバムで、リード・ヴォーカルはフェイゲンに固定され、ヴォーカルだったデイヴィッド・パーマーはバッキング・ヴォーカルに(まもなく脱退)。


と、いきなり大胆な再編があり、ゲストミュージシャンの起用がデビュー作よりも多くなり始める。


が、まだ全体としてはギターサウンドを中心にした、ロックバンドなのだ。


しかし、そのリードギターの選択の仕方が最早ロックバンドの発想ではなく、プロデューサーとしてのそれである。


その後完成を見る、完璧無比なスタジオワークによるサウンドではなく、西海岸の土臭いロックとダンのモダンな美意識が驚くほど融合しあっていて、その塩梅が絶妙なのが本作で、コレが本作を傑作たらしめている。


デビュー作『Can’t Buy A Thrill』では、それらがバラバラなまま存在してケミストリーが乏しく(それでも魅力あるアルバムなのだから驚異なのだ)、第3作『Pretzel Logic』だと、もはやロックバンドではなくなっていて、むしろ、『aja』への過渡的な傾向がもう見られ、本作の土臭さがもうほとんど消し飛んでしまうのだ。


本作における魅力は、最早、望むことができないものであり、故に貴重なのである。


アルバム単位で見ると、ロックバンドとしてのダンは、最初の2枚までであり、2枚目で完成してしまい、後はフェイゲンとベカーによる苛烈なサウンド探求を優先し、ライヴすら放棄し、要するに完璧なレコードを作る事に専念するという、全くのベツモノに変貌してしまう。


要するに、名前だけが同じで内実はまるで違っているという事なのですね(笑)


結果として、フェイゲンとベカー以外は全員脱退してしまう事になるのだが、このメンバーの演奏力は決して悪いどころか、このバンド、相当に素晴らしく、要するに、この素晴らしいバンドのために選りすぐりの曲を提供し、自らも演奏した。というものの、最高傑作なのです。


最高傑作なるが故にもうこのバンドの使命はこの一枚で終わり。というのが、フェイゲン/ベカーのクールさなのでしょうが、普通はもう少し色気を出して、あと2枚はアルバムを出してカネを稼ぐものですが、そういうところに一切の執着がないのが、実に素晴らしい。


『aja』とともに愛聴していきたいアルバムです。

 

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『aja』よりも前のアルバムのジャケットはどうしてこうも冴えないのであろうか。謎。。