唯一無二だった
モダンチョキチョキズ『ボンゲンガンバンガラビンゲンの伝説』
よくもまあこれだけ多彩な音楽性を一つにまとめる事が出来ましたねえ。という他ない、90年代を代表する大傑作。
よくよく見ると、作曲や編曲に渋谷毅、前田憲男といった凄腕が参加しているし(前田はピアノ演奏でも参加しているようです)、この巨大なバントを事実上動かしていたであろう、矢倉邦晃の作曲能力は並外れたものがある事がわかる。
非常に凝ったコード進行と絶妙としか言いようのないアレンジは、並大抵の才能では内容にものを感じさせる。
これだけ凝りまくっているのに、手応えがとてもキャッチーなのが驚いてしまう。
大阪的なサービス満点なブロークンワード、歌謡曲の替え歌、パンク、ファンク、ジャズ、スカ、ラテンが渾然一体となったジャンル分けを拒絶するような強烈な雑食性は、ともすれば、無個性か散漫に陥りがちだが、どこをどう切ってもモダンチョキチョキズとしか言いようのない個性に満ち満ちている。
ライヴははちゃめちゃで混沌としていたようですが、このアルバムはそれを奇跡的にまとめあげた、ポップとしか言いようのない名作であり、また、大阪以外では成立し得ない圧倒的なパワーと決して下品にならないエゲツなさが見事に同居しており、現在聴いても、聴き手を呆気に取るに十分な強度を備える。
濱田マリのヴォーカルも、そのバンドのカラーを見事に方向付けている。
彼女のお陰で、相当毒気が中和して、ポップなバンドになっていることは間違いない。
現在はその個性がタレントとして重宝されてしまっているけども、もっと音楽でも成果を出して欲しい気がする。
敢えて近い存在を言えば、フランク・ザッパなんでしょうけども、そういう洋楽との比較というものを持ち出す必要を全く感じない唯一無二な音楽である。
奇跡的なバランスで成立していたバンドであったため、短命に終わってしまったけども、とてつもないインパクトを聴き手に与えてくましたね。
オウム心理教が爆発する前夜に花開いた
最後の徒花。