男泣き!
The Band
『Music from Big Pink』
19世紀末のアメリカからやってきたのではないかという風貌(リーヴォンを除くメンバーは全員カナダ人ですが)。
ロック史に燦然と輝く名盤。
あのエリック・クラプトンがクリームでの活動に嫌気がさしていた時にこのアルバムを聴き、今後の自分の方向性が定まったほどの影響を与えました。
それが、あのデレク&ザ・ドミノウズの結成に結実していきます。
また、ジョージュ・ハリスンはこのアルバムを大量に購入して、「このアルバムはすごいから聴け!」と言って知り合いに配りまくっていたそうです。
彼もソロに転向してからの作風は、やはり、アメリカ南部の音楽への志向を露骨に出していました。
こんな渋いアルバムが1968年にひっそりと発売され、そこそこの売り上げがあったというのは、ある意味すごい事です。
なんと、全米最高30位です。
たしかに、The Bandは、ライヴの時のボブ・ディランのバックバンドだったわけですから、それなりの知名度はあったわけですけども、彼らの仕事は裏方ですから、ホントに地味な存在であったはずです。
その辺の社会的な背景は不勉強は私にはわかりません。
日本でも、細野晴臣などの先鋭的なミュージシャンが早くからこのアルバムの凄さを察知していて、高く評価していたようですね。
ボブ・ディラン作曲も含めたどの曲も見事とというほかなく(しかも、ディランのバージョンのクオリティを軽く超えていますね)、かいつまんで聴くよりは、アルバム全部を聴き通すような聴き方が向いている作品だと思います。
タイトルの由来となった「ビックピンク」。ただし、アルバムの録音はここで行われたわけではないです。
R&B、ソウル、ゴスペル、フォーク、カントリーという要素を実に渋くミックスしていく感覚は、およそ新人離れいて、このデビュー作で完成の域に達してしまっています。
タメの効いたリーヴォン・ヘルムのドラム、オルガンを自在に操るガース・ハドソン、決して前に出ることのない、さりげなさが魅力のロビー・ロバートソンのギター、リーヴォンとともにリズムを強力に支えるリック・ダンコウのベイスが見事なまでに噛み合っています。
メンバーはまだかなり若く(ロビー・ロバートソンとリチャード・マニュエルはまだ25歳ですよ!)、この年齢とやっている音楽のギャップがものすごいものがあります。
ヴォーカルもとても20代とは思えないですよ。
ものすごく音楽的に老成していたんですね。
どの曲も素晴らしすぎて評価不能ですけども、私の愛するリチャード・マニュエルの不安定なファルセットで歌われるラストの「I Shall be Reliesed」は感涙もの!
リチャード・マニュエルのヴォーカルなくして、ザ・バンドはありえないのです。
私は本作でブラックミュージックの底知れない凄さを知りました。
これを聴かずにロックを語ることなど許されないほどの大傑作です。
ディランは絵の才能はないよね。。