もうスターになる準備は既に整っていた。
David Bowie『Hunky Dory』
一般的には『Ziggy Stardust』での爆発前の作品として、地味な扱いを受けるアルバムですけども、この2つのアルバムにそんなに劇的な違いは実はないんですよね。
でも、音楽的には評価が全然違っているというところに、デイヴィッド・ボウイというミュージシャンの秘密があるような気がします。
多分、ミック・ロンスンの活躍の度合い。が両者の評価を分けている気がしますけども、その意味で考えると、「Life on Mars?」での決して長くはないけども、とても印象的なソロを弾くロンスンのギターの素晴らしさを見いだしたという事が、本作の最大の収穫だったのかもしれません。
ボウイのロマンチシズムが爆発する唱法と、それを支える大仰なストリングス、ロンスンの身をよじるようなギターが渾然一体となった、ボウイ史上ベスト3に入る名曲ですね(ということは、ロック史上の名曲ということです)。
また、ボウイ独特のチープなファンクネスが横溢する「Changes」や「Oh, You Pretty Things」という、いわゆる「Young Americans期」のボウイの萌芽も既にみられ、それ故に本作はとても私は好きなんですよね。
こういう新しい試みと、これまでのフォークロック路線が無理なく同居していて(そこも次回作と同じなんですけども)、こちらにも、「Andy Warhol」やシメである「The Bewlay Brothers」と言った名曲があるのですから、本作は『Ziggy Stardust』と同じくらいの評価を得ても何らおかしくないんですよね。
多分、後は、「ジギースターダスト」というコンセプトだけだったんですね、ボウイになかったのは。
とにかく、アメリカへの屈折した愛を歌い続けるシンガー&ソングライターとしての実は大傑作アルバムなのよ。聴かないと勿体ないですよ。という事で本論を締めたい。
ジャケットも麗し。