からの竹内まりあです。
竹内まりや『Longtime Favorites』
1960年代のポップスのカヴァーのみを収録した、実に肩の力が抜けたアルバム。
山下達郎と大瀧詠一のデュエットがそれぞれ一曲ずつ入っているのが目玉ですが、それが仮になかったとしてもこのアルバムは傑作と言ってよいでしょう。
彼女のすごさは、どの曲を歌ってもすべて彼女の曲になってしまうところです。
あたかも彼女のための曲になってしまうんですね。
カヴァーというのは、あんまり自分に引き寄せすぎてもいけないし、かと言って、あんまりオリジナルにより近づけると、カヴァーしている意味がなくなってしまうので実は結構難しいです。
ましてや、ここで取り上げている曲は、どれもこれも大ヒット曲ばかりで、オリジナルを知らなくても誰かのバージョンで必ず一度は耳にしているというものですから、どうしたって比較対象となってしまうのですが、彼女の歌唱はやはり桁が違っていますね。
私が特に気に入ったのは、「なみだの16才」、「ボーイハント」、「そよ風にのって」、「悲しきあしあと」、「ジョニー・エンジェル」、「砂に消えた涙」、「恋のひとこと」、「この世の果てまで」。
特に、「そよ風にのって」、「悲しきあしあと」、「ジョニー・エンジェル」、「砂に消えた涙」の4曲はホントに見事だと思いました。
逆に、イタリア語で歌うカヴァーは私は彼女の芸風と合ってないと感じます。
一部、服部克久がアレンジしてますが、他はすべて山下達郎がアレンジをし、楽器演奏の大半をこなし、バックヴォーカル、果てはデュエットまでしているのですが、「悲しいあしあと」をニューオリンズ風にアレンジするセンスには脱帽です。
また、「ジョニー・エンジェル」の女性コーラスの透明な美しさは、まさに絶美!
本作発売時点で、すでにアルバム制作としては「ヴィクトル・エリセ状態」になっていた大瀧詠一とのデュエットですが(これを呆気なく実現させてしまうのが、竹内まりあの神通力なのでしょう)、コレを聴いていると、返す返すも大瀧詠一にはあと一枚アルバムを作って欲しかったという思いが募りますね。残念。