ロックにおける贅沢。
Maria Muldaur『Waitress in a Donut Shop』
それにしても参加ミュージシャンの豪華さ!
ベニー・カーター、ハリー・スイーツ・エディスン、レイ・ブラウン、ニック・デカロ、ジェフ・マルダー、エイモス・ギャレット、デイヴィット・グリスマン、ローウェル・ジョージュ、ポール・バターフィールド、デイヴィッド・リンドリ、ジム・ゴードン、リンダ・ロンシュタット、ジェームズ・ブカ、Dr.ジョン.....
もう卒倒しそうなほどのメンバーが参加してますよ(笑)。
曲目もとても変わっていて、ファッツ・ワーラがあるかと思えば、リーバー&ストーラー、アラン・トゥーサンまであるという幅の広さです。
アメリカ音楽の総力が結集した感がありますね。
ザ・バンドやオールマン・ブラザーズの成功は、やはりアメリカのロックシーンに影響を与えたらしく(その先駆として60年代終わり頃にシングルヒットを連発しまくったCCRがありましたね)、60年代はビートルズ、ストーンズといったイギリスのロック勢力にかなり押され気味であったアメリカのロックも(何しろ、ジミ・ヘンドリクスもブレイクしたのは、イギリスのロックバンドとしてです)、自分の足元を見つめ、その良さを示すことで、本家本元である事を示すという事にようやく気がついたんでしょうね。
マリア・マルダーのソロ第1作目から「Midnight in Oasis」がヒットした事で(エイモス・ギャレットの素晴らしいギターソロでも有名です)、制作費がダンマリ確保できたのでしょうか、曲によってはジャズのビックバンドやストリングスまで盛大についた、しかし、40分に満たないというなんとも贅沢な作品となりました。
こういう豪勢さは、後にスティーリー・ダン〜ドナルド・フェイゲンによって更にエスカレートしていくんですけども、その話は置いておきまして、当時はレコードがよく売れてましたから、バカ売れするとは思えないような本作のようなアルバムにもこんな凄腕ばかりが注ぎ込まれたのでしょう。
このアイディアは、プロデューサーのレニー・ワロンカーのものなんでしょうかね。
レニーはライ・クーダー、リトル・フィート、ランディ・ニューマンのアルバムのプロデューサーでもありますから、その可能性がありますね。
それにしても、これだけいろんな音楽を一枚のアルバムにも放り込んでも、マリア・マルダーはすべて余裕でも歌いこなしてしまうところが、すごいです。
個人的には、Sqeeze Me、I'm A Woman、Oh Papaがよかったです。
Oh Papaでは、エイモス・ギャレットとしか言いようのない、夜空を漂うような美しいギターがやはり素晴らしいですね。
Sweetheart、Honey Babe Bluesは悪くないんですが、それぞれダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックス、ライ・クーダーのバージョンの方が素晴らしいと思います。
マリア・マルダーは、やはり70年代が素晴らしく、彼女を語る上では前作と本作は絶対に聴き逃す事のできない贅沢な傑作です。