和みの傑作。というのはあるのですね。
John Sebastian
『Tarzana Kid』
ラヴィン・スプーンフルを呆気なく脱退してしまったジョン・セバスチャンの1974年のソロ作。
オッ、すごいマンドリンがうまいなあ。と思ってパーソネルを見てみたら、ライ・クーダー(笑)。
そりゃうまいわけですが、この作品、とにかくメンバーが異様に豪華です。
というか、70年代のアメリカのロックって、こういう作り方が案外普通で、あるミュージシャンが一応リーダーとして顔は出ているんですけども、そこに友人のミュージシャンをゴソッと参加して、みんなでいい仕事をしようみたいなやり方がとても多い。
ココに、参加しているミュージシャンを羅列してみますと、
ローウェル・ジョージュ、ライ・クーダー、エイモス・ギャレット、デイヴィッド・グリスマン、デイヴィッド・リンドリー、エミルー・ハリス、ケニー・オルトマン、ジム・ゴードン
となりまして、まさに、70年代の西海岸を代表する人々が集結しておりますね。
一人ひとりが何者なのかを説明していると、もう、アメリカロック史になりますから、一切割愛しますけど(それだけすごい人が集まっているという事ですね・笑)、こういった人々を起用できてしまう、当時の西海岸のロックの独特の緩い連帯感が私はたまらなく好きで、ロックはほとんど聴かなくなった今でもこの辺のロックはついつい手がでます。
セバスチャンのやっている事は、ある意味、スプーンフルから一貫していて、ラヴリーな楽曲をマイペースに歌い上げるということに終始しているわけですが、フォーク、カントリー、ブルースなどをほのぼのとした感性でミクスチャーする才能は見事ですよね。
クリフ・リチャード「スィティンギン・リンボウ」、「リトル・フィート「ディクシ・チキン」と言ったカヴァー曲とセバスチャンのオリジナルが溶け合っているようで、こういう才能はライ・クーダーと互角だと思うんですが、セバスチャンは今ひとつキチンと評価されていない気がします。
まあ、そういう慎ましいところがまたセバスチャンの魅力ではあるのですが。
ほのぼのとした凄み。というのは、あり得ませんし(笑)。
全体として、「もう1つのありえたかもしれないリトル・フィート」には聴こえますね。
よって、リトル・フィートが好きな人にはたまらないと思います。
70年代の西海岸が生み出した、一服の清涼剤。大名作。
この地味なジャケットからは想像もつかない滋味が溢れる名盤です。